賃上げを「人が育ち、定着する会社づくり」のきっかけに


2026年度の最低賃金は、静岡県1,154円、愛知県1,195円へ引き上げられます。最低賃金・賃上げへの対応をきっかけに、中小企業が考えたい「人が育ち、定着する職場づくり」のポイントを解説します。

2026年度の最低賃金が決定しました

2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金が出そろいました。
全国加重平均は1,177円となり、昨年度の1,121円から56円の引上げとなります。
静岡県・愛知県については、次のとおりです。

【静岡県】
1,097円 → 1,154円(57円引上げ)
2026年10月15日から

【愛知県】
1,140円 → 1,195円(55円引上げ)
2026年10月1日から

最低賃金の引上げが続くなか、
「人件費がこれからどこまで上がっていくのだろう」
「パート・アルバイトだけでなく、正社員の給与も見直したほうがいいのだろうか」
「賃上げをしながら、会社の利益もしっかり確保していきたい」
と考える中小企業の経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回の最低賃金の引上げが、「これからも人に選ばれる会社づくり」を考えるきっかけになればと思います。

「人への投資」を考えるきっかけに

働く人にとって、給与はもちろん大切です。
採用においても、給与は応募先を選ぶ大きな判断材料の一つです。
だからこそ、最低賃金の引上げに合わせて給与を見直すことは、これからの採用や定着を考えるうえでも大切な取り組みです。

一方で、働く人が「この会社でこれからも働きたい」と感じる理由は、給与だけではありません。
例えば、
・困ったときに相談できる上司がいる
・頑張ったことをきちんと見てもらえる
・「ありがとう」「助かったよ」と声をかけてもらえる
・自分の意見を安心して伝えられる
・お互いに助け合える
・自分自身の成長を実感できる

こうした日々のかかわりが、「この会社で働き続けたい」という気持ちにつながっていきます。

給与を整えることと、働きやすい・働きがいのある職場をつくること。
これからは、この両方を考えていくことがますます大切になってきます。

人が定着する中小企業には共通点があります

リクルートが行った人が定着している中小企業と、そうでない企業を比較した調査では、興味深い違いが見られます。

定着に向けた取り組みでは、
・業務時間の柔軟化
・時間外労働の削減や休暇取得の促進
・賃金水準
・成果や仕事内容に応じた人事評価
などに違いが見られています。

さらに職場環境では、
・上下関係にとらわれず意見を出しやすい
・社員同士のコミュニケーションが活発
・経営者と話しやすい
・家庭やプライベートの事情を考え、フォローし合える
・経営者が社員の活躍に積極的に取り組んでいる
といった項目が挙げられています。

参考:株式会社リクルート「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査『人材定着編』」

人が定着する会社が大切にしていること

人が定着する会社が大切にしていることは、特に次の4つがポイントになると考えています。

1.働きやすい環境を整える

長時間労働を減らす、有給休暇を取得しやすくする、家庭と仕事を両立できる働き方を考えるなど、社員が安心して働ける環境を整えることです。
制度をつくるだけではなく、「実際に利用しやすい職場になっているか」まで考えることが大切です。

2.日々のコミュニケーションを大切にする

「相談しづらい」
「頑張っているのに誰も見てくれない」
そんな小さな気持ちの積み重ねが、退職につながることもあります。

反対に、
「ありがとう」「助かったよ」「最近どう?」
といった日々の何気ないコミュニケーションが、職場への安心感や信頼につながります。
特別な制度を導入しなくても、今日から始められます。

3.頑張りや成長をきちんと認める

自分の仕事を見てもらえている。
頑張ったことを認めてもらえている。
次に何ができるようになれば成長できるのか分かる。
こうした実感は、社員のモチベーションや成長にもつながります。

4.会社が目指す方向を社員と共有する

「この会社は、何を大切にしているのか」
「社長は、どんな会社をつくりたいと思っているのか」
「自分たちの仕事は、誰の役に立っているのか」

給与や待遇だけではなく、「この会社で働く意味」を感じられることも、人が育ち、定着する会社をつくる大切な要素です。

中小企業だからこそできる「人が定着する職場づくり」

給与水準を整えることは大切ですが、中小企業には中小企業だからこその強みがあります。

社長と社員の距離が近い。
社員一人ひとりの頑張りが見えやすい。
社員の声を働き方や制度に反映しやすい。
困っている社員がいれば、柔軟に対応しやすい。

社員一人ひとりと向き合えることは、中小企業にとって大きな強みです。
だからこそ、「社員一人ひとりを大切にする会社」であることを、採用や定着における強みにしていくことができます。

2026年度の最低賃金改定で確認しておきたいこと

最低賃金の改定にあたっては、まず現在の給与が新しい最低賃金を下回っていないか確認しましょう。
確認するのはパート・アルバイトの時給だけではありません。
月給制の社員についても、最低賃金以上になっているか確認が必要です。

さらに、次のようなことも一緒に確認することをおすすめします。
「長く頑張ってくれている社員との給与バランスは適切か」
「頑張った人が評価される仕組みになっているか」
「社員は自分に何を期待されているのか理解できているか」
「困ったときに相談できる職場になっているか」
「若手社員が、この会社で成長していく姿を描けているか」

給与を見直すタイミングは、こうした会社の人事・労務・職場環境を見直す絶好の機会でもあります。
最低賃金への対応を、「最低賃金を下回らないように給与を変更する」だけで終わらせないことがポイントです。

「採用する」から「育ち、定着する」会社へ

人手不足の時代だからこそ、新しい人を採用することと同じくらい、今いる社員が「ここで働き続けたい」と思える会社をつくることが重要になっています。

給与を整える。働き方を整える。コミュニケーションを整える。社員が成長できる仕組みをつくる。
そして、経営者がどんな会社をつくりたいのかを社員と共有する。

その積み重ねが、「人が集まり、育ち、定着する会社」につながっていきます。

最低賃金の改定を、「人件費が上がる」という視点だけで終わらせず、これからどんな会社にしていきたいのかを考える機会にしていただければと思います。

人が育ち、定着する会社づくりをサポートします

当事務所では、最低賃金への対応や賃金制度、就業規則などの労務面だけではなく、社員の採用・育成・定着、職場づくりまで一緒に考える伴走支援を行っています。

「採用しても、なかなか人が定着しない」
「社員がもっといきいき働ける会社にしたい」
「給与や評価制度を見直したい」
「社員の声を聞きながら、職場をもっと良くしていきたい」

そんなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
制度をつくって終わりではなく、会社の状況や社員の皆さまの声を大切にしながら、より良い職場づくりを一緒に考えていきます。

どうぞお気軽にご相談ください。